活動内容

第2回SWC首長研究会

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  • 開催期間2010年5月25日(火)~26日(水)
  • 開催場所筑波大学秋葉原キャンパス
  • 主催Smart Wellness City首長研究会
  • 共催筑波大学
  • 後援内閣府

イントロダクション

 Smart Wellness City(SWC)首長研究会は、 平成21年11月に筑波大学にて「我が国の超高齢・人口減社会によるさまざまな社会課題を克服するために、危機感を共有する首長が集結し、『健幸』をこれからのまちづくりの基本に捉えた政策を連携しながら実行し、最新の科学技術や科学的根拠に基づく持続可能な新しい都市モデルの構築を目指す」という宣言のもと発足した。第2回の研究会は、平成22年度より3年間のSWCとしての理念、及び行動指針を構築していくための課題について議論を行った。

1日目

SWC首長研究会会長、共催・後援代表者より挨拶

久住 時男SWC首長研究会長 / 新潟県見附市長 健康はまちづくり全体に広がる広義な意味合いをもっている。見附市における事業予算をSWCと健康をキーワードで分類すると総予算の64%がこれらに当てはまる。このSWCという考えは、大きな総合政策であり、次に繋がるような議論をこの二日間で行っていきたい。
久住 時男
山田 信博筑波大学長 多くの人々が健康に関心をよせているものの、設計通りにいかないのが健康の難しさ。SWCは健康を色々なことに関連させることで、まちづくり、少子高齢化対策、格差対策のヒントやキーワードがある。 この研究会で皆の知恵をしぼって良いまちづくりのプロジェクトを進行することは、ライフイノベーションやグリーンイノベーションにつながると考えており、大学としてもチャレンジングな気持ちで取り組んでいきたい。
山田 信博
和泉 洋人内閣官房 地域活性化統合事務局長 / 内閣府 地域活性化推進室長 SWCはまちづくり・地域づくりを通して健康に取り組むというよりスケールの大きなテーマであり、健康・医療・介護における困難創出する前提条件自体を根底から改革する可能性を秘めたものだと考える。実現に向けて、連携を取って、世界に先駆けて実現するようにしていきたい。
和泉 洋人

第2回研究会の目標アウトカムと地域の課題整理

久野 譜也筑波大学大学院 人間総合科学研究科 准教授 / SWC首長研究会事務局幹事 地域を中核とした総合的健康づくり施策としての課題は、(1)地域の健康づくりは健康状態が比較的良い少数の住民を対象としている、(2)大学は個々の学問としてのエビデンスはあるが、地域に実践できる総合的健康づくり施策に対するエビデンスが不十分、(3)地域における総合的健康施策を遂行できる人材養成、である。その解決策として、(1)地域での総合健康づくりによる社会実験のプロセス及びアウトカム評価、そして(2)地域での総合的健康づくりが普及するための政策パッケージ及び人材育成のシステムの構築が必要である。
久野 譜也

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参加メンバーの自己紹介と参加自治体での取組状況

仁志田 昇司福島県 伊達市長 市民が健康を意識して健康で長生きする都市づくりを行っており、予防に投資する健康投資社会を目指して取り組んでいる。
仁志田 昇司
國定 勇人新潟県 三条市長 SWCは自治体がこれまでのような狭義の健康施策だけでなく、広義の健康施策としてトータルに取り組んでいくことに気づきを与えてくれた。SWCの推進のために、中心市街地に生活機能の維持を取り戻すインフラ整備を行い、高齢者が毎日歩いて買い物に行ける都市空間整備を行いたい。
國定 勇人
中貝 宗治兵庫県 豊岡市長 SWC構想の素晴らしいところは、まちのつくりそのものが健康に影響しているという視点、また経済最優先で発展してきた日本の都市・まちがそこに住む人々を本当に幸せにしているのか、優しいのか、美しいのかということをまちの側から考える視点があるところ。人口減社会とそれに伴う経済減少という課題をSWC構想を成功させることで解決していきたい。
中貝 宗治
篠田 昭新潟県 新潟市長 一人一人の幸せ度をまちの売りとし、新潟の強みである地域のつながりの強さを活かしていきたいと考えている。健康で長生きを目指し、現在、運動を中心とした健康づくりにも力を注いで取り組んでいる。
篠田 昭
藤井 信吾茨城県 取手市長
 幸せを体感できるまちづくり。そのために市民の皆さんには幸せの自家発電を行い、蓄電し、必要な時に自分や他人に放電、売電してもらう仕組みをつくっていこうとしている。
藤井 信吾
細江 茂光岐阜県 岐阜市長 取組みの一つとして、スローライフまちづくり全国都市会議を行っている。人間が中心として不安のない、人間を主役とした社会・人間主義都市をつくっていこうと考えている。
細江 茂光
市原 健一茨城県 つくば市長健康で健全なまちを目指して施策展開を実施している。
市原 健一
引場 良男新潟県 妙高市副市長全ての生命が安心して育むことができるまちづくりに取り組んでいる。
引場 良男
野口 憲茨城県 牛久市副市長 健康日本一を掲げ、事業を行っている。
野口 憲

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特別講演 1「健康づくりのイノベーションと科学技術」

板生 清東京大学 名誉教授 人が発している情報、市民が本当に必要としているものを、情報通信技術(ICT)を活用して提供していくことで健康長寿都市を目指していけるのではないか。健康維持活動・増進活動・安心して暮らせる見守り安心サービスに対して、ICTを使うことでより個別性の高い健康づくりに繋げていくことができる。多くの人が参加しないと自治体のインパクトになっていかない。多くの人に参加してもらうためには科学技術の活用が重要である。この技術を活用してもらうことでさらに技術が高まり発展していくであろう。
板生 清

特別講演 2「地域づくりのイノベーションとソーシャルキャピタル」

金子 郁容慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 本人次第と思われているもの(例えば肥満)も周りの影響を受け、人とのつながりに依存している。健康を個人の問題として捉えるのではなく、集団の問題として捉えていくことが重要であり、一人一人が孤独に行うのではなく、コミュニティで行いソーシャルキャピタルを高めることによって、社会的コストが低くなり、経済的効果が高まり、社会的満足度が高くなることに繋がる。ソーシャルキャピタルの高いコミュニティを形成し、サポートしあいながら個人の意識やライフスタイルを変化させることが必要である。
金子 郁容
討論
 ソーシャルキャピタルの向上が重要であることは各首長からも賛同があり、これに取り組む必要性は強く理解された。さらにソーシャルキャピタルをどのように向上させるのか、についての具体的な方法について議論がなされた。しかしながら、その解はまだ見えておらず、今後SWCの取り組みの中核となるテーマであることが確認された。

話題提供 1「地域における広報戦略」

花上 憲司電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局エグゼクティブ・プロジェクト・マネージャー PRは情報を一方的に流すことでなく、双方向のコミュニケーションづくり、関係づくりが重要である。 そのためには、(1)誰がどの位関心を持っているか(人の関心度)、(2)どのような言い方なら共感できるか(交換のよりどころ)、(3)誰をターゲットにするのか(ターゲットの選択)、(4)どのような表現方法で進めるか(表現方法)、(5)どういう計画で伝えていくのか(媒体計画)を押さえて、相手に合ったものをしっかりと伝えていくことである。
花上 憲司

情報提供 1「健康づくりを中核に据えた地域活性化について」

青木 由行内閣官房 地域活性化統合事務局参事官 健康づくりを中心にまちづくりを行うということは、各省庁にまたがる課題であり、縦割り行政では解決できない総合行政が必要となる。また、住民とともに取り組めるということは次の時代にするべきことであるので是非協力していきたい。健康づくりを中核に捉えた地域活性化について、各省庁の施策が連携したパッケージとして解決を図る必要があり、現在、省庁連絡会を開催し、関係省庁と一緒になって内閣府で取りまとめる仕組みを作ろうと考えている。
 この健康に投資する仕組みづくりからは、医療費適正効果だけではなく、健康関連産業の創出に結び付けることが見込まれる。そのために、地域における優良なモデルをつくり、全国的に大きく展開していきたいと考えている。
青木 由行

情報提供 2「総合型地域スポーツクラブの育成と活動」

坂元 譲次文部科学省 生涯スポーツ課長 総合型地域スポーツクラブは地域住民の、地域住民による、地域住民のためのスポーツクラブであり、地域住民が主体性をもってスポーツに取り組んでもらえるためのものである。また、会員以外のスポーツサービスを充実することによって総合型クラブの社会性の発信に取り組み、永続的な組織にしたいと考えている。
坂元 譲次
討論
 総合型クラブについては、県と教育委員会が中心であり、基礎自治体が口を出しにくい体制であるため、基礎自治体に育てる仕組み、人材、資金等足りないものがたくさんあるのが現状。文科省と基礎自治体とのギャップをどう埋めていくか、健康づくりとしての受け皿としてどう活用するのかについての具体化が必要との議論が出された。

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2日目

情報提供 3「健康・医療・福祉を核としたまちづくり・みちづくり」

神田 昌幸国土交通省 まちづくり推進課室長 健常者だけでなくハンディを持つ人を含め全ての人々がまちに出ることがまちやみちの本来のあり方と考える。健康の視点からも歩行の重要性に着目し、病院や福祉施設、子育て支援施設が徒歩圏にある、「歩いて」暮らせるまちづくりを進め、公共交通など移動手段のあり方も合わせて考えることが必要である。
神田 昌幸
討論
 自治体の中にはコミュニティバスを活用するなど、地域住民が外出する環境を整えようとする取り組みを行っているところがあるが、それらの有効性は依然として不明確なままである。また、具体的にどのように歩けるまちづくりを進めていけばよいのか、ほとんど検証がなされておらず、SWCの取り組みとして、これは重要課題であるとの認識で一致した。

情報提供 4「地域における健康づくり」

木村 博承厚生労働省 生活習慣病対策室長 健康で自立して生活できる期間(=健康寿命)をいかにして延長するか。生活習慣の改善を促すために、行動心理学等に基づいた新たなコミュニケーション手法の開発も重要となる。
木村 博承
討論
 健康に影響を与えるものは幅広い。そのため、健康政策だけで対応しようとするのではなく、国や自治体それぞれのレベルで異種業の話し合いの場を設け、ともに協力し合うことが今後より一層必要である。「健康寿命」は、国や地方自治体で成果の指標として期待されるが、どのような定義にするかについての検討が求められる。国や各地方自治体が成果の検証として使える標準化されたデータをとり、エビデンスベースを基盤として取り組んでいくことが期待される。

話題提供 2「健康のまちづくり『柏の葉キャンパスシティPJ』」

椎名 一博三井不動産 S&E 総合研究所 所長補佐 公・民・学連携の未来世代のためのまちづくり実現のために、オンデマンドバスやICタグレンタサイクルの仕組みをローコストで提供することを目標に試行中。超高齢社会を迎えるにあたって健康や環境をテーマにまちづくりをしていきたい。
椎名 一博

特別講演 3地域づくりのための科学的マーケティング

西尾 チヅル筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 公共政策に対して地域住民のニーズを類型化することは、どのような価値を使いたいかによってセグメントが変わってくるため困難である。地域づくりにおいても、誰をターゲットとするのか、どんな価値を提供するのか。また、健康は目標なのか手段なのかによって効果の見せ方が変わるため、カスタマイズ的な発想が必要である。ポイントとなるのは、参加してもらう、そして継続してもらえる仕組みを作り、どのような価値を使いたいかによってセグメンテーションしていくこと。そして、効果をどう見える化するかが重要となる。
西尾 チヅル

SWC行動指針の策定

Policy of Smart Wellness City
住民は、
 「Wellness(健幸)=社会貢献」を理解し、これまでの「便利さ」のみを追求するのではなく、地域で人とのつながりを持ちながら、健康的な生活を目指し、
自治体は、
 次の20年間で少子高齢・人口減による社会構造の変化に対応するために、健幸に影響する要因の中から、SWCの基盤構築のための要因を科学的に検討し、「自然と健康になれるまち」づくりのための都市ビジョンを構築した上で、住民と一体となって社会実験を推進し、
国、大学は、
 早期に地域で社会イノベーションを起こすために、制度改革やエビデンスやノウハウ集積においてサポートする。

Smart Wellness City 行動指針2010

 我々は、3年間の間で、SWCの具体像を地域の特性に応じて明確にし、平成24年度までを第一フェーズとして、その基盤を確立することを目指す。なお、この取り組みで得られる成果を全国に普及するために、大学及び国の地域活性化統合事務局を基盤とした省庁連絡会と連携し、エビデンスの集積及びそれらの政策パッケージ化を行う。
第一フェーズの具体的な行動目標としては、(1)SWC概念の構築、(2)ICTを利用した地域のヘルスリテラシー、ソーシャルキャピタル向上法の社会実験、(3)インセンティブシステムのフィジビリティ、(4)自動車優位のライフスタイルから脱出のためのトライアルの検討(市民の意識変革、交通体系、道路環境のあり方)、(5)地域課題別のまちづくりモデルのたたき台づくりとする。

第一フェーズのゴールと目標の整理
ゴール
高齢化標準社会としての社会インフラビジョンの策定と地域健康づくりパッケージの開発
目標
-複数都市で住民の健康寿命の延長と自治体財政における医療費の軽減
-生活習慣病罹患者の減少
-高齢者における社会参加の割合の増大
(今後議論を通じて、数値目標を設定する)

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総括

 まちの構造と健康との関係についての状況証拠は集まってきているものの、住民が自然と健康になれるまちを実現するために何をすべきかは明らかになっていない。健康というキーワードを基にまちを総合的に変えることで本当に住民の意識や行動を変容させ、結果としてまちに健康、幸福、にぎわい、つながりをもたらすことができるのか。このことに関しては自治体・大学・政府が三位一体となって社会実験を実施し、科学的エビデンスを蓄積していく必要があるだろう。第2回目となった当研究会では、具体的な行動指針とゴール案が示された。次回以降、この案を基に具体化について議論していきたい。