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シンポジウム

1/30 新潟市 スマートウエルネスシティ健幸サミット in にいがた

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当日の動画がこちらからご覧いただけます。

日時 2013年1月30日(水)
場所 りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)劇場

コーディネーター 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授 久野譜也氏

参加者 久住時男見附市長 国定勇人三条市長

仁志田昇司福島県伊達市長

篠田昭新潟市長 ※以下、敬称略

 

 

“スマートウエルネスシティ健幸サミットinにいがた”を開催するにあたり

新潟市 篠田昭
「歩いて暮らせるまちづくり」を基本とした、健幸(※)で、

元気に長生き出来るまち=スマートウエルネスシティ(以下SWC)

を目指す。歩いて暮らせるまちには、公共交通が不可欠であるが、

地方の課題は公共交通が不便なことである。大都市圏のように

公共交通が充実することで歩行量が増加し、健康になれる可能性

がある。そこで、これらを総合的に考え、健康とまちづくりを

融合させた、市民全員が健康になれるSWCの取り組みを始めている。

※「健幸」とは体の健康だけでなく、人々が生きがいを感じ、安心して豊かな生活を送れる状態

 

スマートウエルネスシティとは

筑波大学久野譜也 

スマートウエルネスシティとは、多くの住民が健幸になるための

まちづくり、即ち「歩いて暮らせるまち」を作ることである。

そのためには、市民が便利さだけを追求しすぎない生活に

変えること。それをサポートするために、社会参加、にぎわい、

快適な歩行空間、そして、車依存から脱却するための公共交通の

再生を重要課題として位置付けている。

 

事例紹介:各市の総合特区の事例紹介

見附市 久住時男

住民の健康知識を上げることを目的として、新しい広報戦略を

進めている。健康情報に特化した広報誌を全戸配布し、その内

一部の住民にタブレットで健康情報と地域情報を配信する。

健康情報を提供し、住民の健康知識を上げる実証をしている。

伊達市 仁志田昇司
定期的な運動習慣のない市民を対象として、デジタルフォト

フレーム端末を用いて運動を行う意図がある者、ない者に応じた

健康情報を配信している。どの程度健康に関する知識が向上し、

身体活動に関する知識や行動が変容するか否かを明らかにする

実証実験を行っている。

三条市 国定勇人

中心市街地に賑わい復活させることを目的として、三条マルシェというイベントを開催して

いる。三条市では、商店街のにぎわいを取り戻し、その結果として

住民の歩行量の増加など、健康になれるまちづくりに取り組んでいる。 

新潟市 篠田昭

新潟市の課題として、バス路線の減少が挙げられる。都市部に

おけるBRTの導入、および都市部以外の路線バスの増加により

公共交通を抜本的に改革し、まちのにぎわいを再構築していこうと

考える。

 

 

ディスカッション①

♦ 賑わいがあり、まちが活気付くためにはどのようにアクションを起こすべきか。まちを変えていくポイントとして、何が考えられるか。

見附市  SWCの方向性は、公共交通の充実や、賑わいのあるまち並みを創出し、人が家から出たくなるようなまちにするということである。そのための拠点作りと、仕組み作りをどのように組み立てるかが課題である。実現するためには、市民の理解(合意)が必要である。

久野   10年後には社会構造が大きく変化することは確実である。まちづくりは本来、何十年も掛けて行うものだが、10年後にSWCを実現するためには、早急に対応する必要がある。その場合、市民に何をしてほしいか。

見附市  実際にSWCを体験しに行って欲しい。例えば、三条マルシェでまちの賑わいを体験する、新潟市で公共交通の利便性を体験するといった経験が、市民の理解を得、SWCを実現することを早めるのではないかと考える。

伊達市  多くの人が郊外に車で向かい、買い物をしている。それは、市内で買い物するところがないことも原因のひとつである。そこで、歩行者が歩きやすいまち、買い物しやすいまちを目指して、市内の一方通行を推進したが、市民から反対の意見が上がった。実際にまちに住むのは住民であるため、まちづくりをする上で市民の理解を得ることは最重要である。歩いて暮らせるまちを実現するためには、ハード面の整備に関する市民の同意を得ると同時に、三条マルシェのように中心市街地を活性化させ、まちづくりから市民の意識を変えていくこともひとつの方法である。

三条市  まちづくりは自治体だけではなく、地域住民と一緒に行う必要があるが、両者の合意形成は非常に難しい。SWCの取り組みは、今までにない新たな取り組み(想像できないもの)である。人間は想像を絶するものを拒否する性質を持っている。しかし、三条マルシェのような一過性のイベントでも、行政や地域住民にとってSWCのゴールイメージを想像することができる。職員と住民が同じゴールイメージを持つことで、合意形成につながるのではないか。

新潟市  日本は道路に税金を使うことは合意的だが、公共交通に使うことは否定的である。ヨーロッパのように、国が公共交通に予算を負担することも視野に入れるべきである。公共交通発達のためには、国・自治体・交通事業者が総合的に進めていくことが必要である。

 

ディスカッション②

♦公共交通を整備するだけで住民は使用するのか。住民が公共交通を使用するためには、自治体は何を行うべきか。

三条市  中心市街地に行くまでの交通と、中心市街地内の移動という考え方では全く異なるものである。しかし、日本においては住宅地がポイントごとに集合しているわけでなく、境目がない。この様な状況で、バスなどの公共交通が本当に市民の足となり得るのか、複合的な問題が出てくる。三条市の場合は、タクシーを公共交通として利用している。公共交通の整備は、地域の特性や使う場面を絞って考えていく必要がある。

伊達市  公共交通は大きく2種類ある。一般住民が使用する公共交通と歩行困難な高齢者などが使用する福祉交通である。歩くまちを目指すには、両者を分けて考えるべきである。理由として、高齢になり、車を運転できなくなると公共交通に頼らざるを得なくなる。しかし、多くの地方都市ではバス停が自宅から離れており、歩行困難者にとっては不便である。そこで、伊達市では、福祉交通にも使用できるデマンド交通(電話を掛けると、家の近所から目的地付近まで送迎するシステム)を展開している。

久野   SWCを展開する上で、福祉交通のように高齢者が使用するものと分けるのではなく、公共交通は全住民を対象とした交通として考えるべきではないか。なぜなら、公共交通の利点は、移動歩行がポイントだからである。福祉交通のような形では、この目的が達成されないのではないか。

ディスカッション③

♦公共交通のあり方を考える。どこまで公共交通を便利にするか。便利にする代償として自動車をどこまで制限するのか。この頃合をどうすべきか。

三条市  公共交通は歩数を増やす目的もあるが、福祉交通のような利便性を高めることで、自宅から出る意思のない住民が外に出るきっかけになり得るのではないか。魅力あるまちを作ることにより、まちを出歩きたくなり、住民の健康を支えることにつながる。まちづくりは一般の公共交通の環境だけでなく、福祉交通と併せて整えていく必要がある。

見附市  公共交通は、車に乗れない人に対してどれだけネットワークを広げるかが課題である。例えばフライブルクでは、道路などのハード面からではなく、賑わいなどのソフト面の整備から進めることで、街中が活気付いている。街中を活気付けるためには、公共交通を整備することで地域住民が市街地で買い物しやすく、生活しやすい空間を作ることが必要である。

新潟市  今までの50年は、まちづくりは自動車を中心とした考え方であった。逆に、SWCは歩行者優先の考え方である。SWCを推進し、住民の理解を得るための過渡期においては、インセンティブも有効な手段ではないか。新潟市ではSWCを定着させるために、自治体だけではなく商店街が中心となって動き出している。

 

ディスカッション④

♦ 各市のSWC推進のために

三条市:三条マルシェのような活気付いたまちを日常化していくため対策とは

三条マルシェのような賑わいを日常化していくには、頻度を高めていく他ない。三条マルシェは現在、月に1度の開催だが、例えば週に1回、ある一定時間を歩行者のみの空間を演出するなど、一時のイベントからプログラム化する必要がある。プログラム化されることで、出店やサークル、パフォーマンスが集い、賑わいを創出できると考える。

伊達市:中山間地も多く存在する伊達市のSWC推進のための対策とは

中山間地の住民が山を降りることはなかなか難しい。しかし、通院のために山を降りることがある。例えば、通院でデマンド交通を利用して山を降りてきた際に、何もせずに帰宅するのではなく、商店街に立ち寄るようなシステムを構築することで、コンパクトシティを目指せるのではないか。

見附市:商店街を活性化させるためには

日本で初めてとなるライジングボラード(自動昇降型の車止め)を導入する。歩行者がいつでも安心・安全に歩けると共に、地域の意向により、いつでも賑わいを創出することが可能となる。ライジングボラードの導入により、賑わいのあるまちを目指す。

新潟市:政令市でのSWCの方向性とは

SWCにおける取り組みを政令市で行うことにより、例えば賑わいや医療費削減効果など、他の自治体の何倍も効果が得られる。政令市で成功例を創出し、他の自治体に提示していきたい。

 

♦最後に

久野 今後、日本人の平均寿命は90歳近くまで伸びると予想されている。すると、寝たきりの期間も延びる可能性がある。これを避けるために、市民が健康になる意識を持つ必要があり、また、その支えとしてまちづくりをする必要がある。