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第10回SWC首長研究会

イントロダクション

Smart Wellness City(SWC)首長研究会は共通の意識を持った複数の自治体が「健幸」をまちづくりの基本に据えた政策を連携しながら実行することにより、持続可能な新しい都市モデル『Smart Wellness City』の構築を目指すという理念のもと平成21年11月に発足した。今回で第10回目を迎え、55の加盟自治体の内、45自治体の関係者が一堂に会して、全体テーマである「10年後を見据えた健康寿命を延伸できる地域イノベーション」を中心として活発な議論が行われた。

出席自治体

伊達市、大河原町、加美町、小国町、会津若松市、取手市、潮来市、足利市、大田原市、芳賀町、前橋市、さいたま市、所沢市、 美里町、柏市、睦沢町、白子町、中野区、多摩市、大和市、新潟市、三条市、見附市、上田市、岐阜市、三島市、安城市、伊勢市、八幡市、高石市、阪南市、田尻町、豊岡市、川西市、加西市、葛城市、宇陀市、岡山市、直方市、日置市(富山市、河内長野市、豊後高田市、指宿市、南城市)

開催期間

2014年7月15日(火)- 16日(水)

開催場所

筑波大学東京キャンパス文京校舎

主催

Smart Wellness City首長研究会

共催

筑波大学

後援

内閣府

SWC首長研究会会長、共催・後援代表者より挨拶

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久住 時男

SWC首長研究会 / 新潟県 見附市長

本研究会は平成21年11月に発足し今年で5年目を迎える、発足当初に方向性が定まっていた訳ではなかったが、産官学の知見を頂きながら夢を持って進めてきた。超高齢化人口減少社会における研究会の役割の意味合いはそれなりにあったと感じている。さらにこうした知見を、国民の暮らしや幸せにつなげていくために、各自治体でモデルを広げていきたい。

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永田 恭介

筑波大学 学長

SWCが目指す「高齢になっても健康であり続けること」が市民の普遍的な願いとなってきている。加盟自治体が増えていることは、健康づくりに対する強い関心の現れと感じている。見附市の久住市長には発足当時から事務局を担っていただき感謝申し上げたい。全国の自治体間の連携を深め、地域の多様な問題を官学が一緒に議論し、様々な活動を通じて社会へ貢献してきたい。

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伊藤 明子

内閣官房審議官、地域活性化統合事務局 次長

平成23年の総合特区第一次指定より一緒に活動をさせて頂いている。2020年には団塊の世代が70歳を迎え、地域活性化・地方再生は大きな課題、今地域に住んでいる人たちが幸せに暮らすこと、地域活性化統合事務局としても首長の皆様の力を借りながら、一生懸命伴走させて頂きたい。

講演 1 「地域イノベーションの実現に向けて」

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和泉 洋人

内閣総理大臣補佐官 内閣官房 健康・医療戦略室 室長

健康寿命の延伸は地域イノベーションの実現における重要な要素。地域活性化統合事務局では地域の長年の懸案を大胆に解決していきたい。政権が長く続くことは一助となる。法人税改革、女性登用、NISA、電力の自由化、ビザ要件緩和等の仕組みを全国に波及させ地域に展開していくが、健康の分野でもそうした仕組みづくりを進めていきたい。健康長寿社会は政府としても強い関心を持つ分野である。日本も今は苦しいが、こうした経験はこれから高齢化するアジアの国々に対し、医療技術、保険制度等の将来の模範を示すことができる。そのため自治体レベルの国際交流も期待している。地域に元気がなければ国は元気にならない、地に足のついた政策を展開していきたい。

 意見交換 

初参加の首長の皆様にお伝えしたいことは、首長自らが考えて動くこと。自治体組織の中でトップの影響の大きさを改めて感じて頂きたい。本研究会においては成果を出した首長が模範となって横へ展開していくと良い。

講演 2 「SWC10回の歩みと今後の方向性」

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久野 譜也

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授

本研究会は加盟自治体を増やすことではなく成果を出すことを目的として運営している。マクロでの政策効果を考えると、ポピュレーションアプローチとしてまちづくりも併せて行うことが必要ということが研究会の活動で明らかになりつつある。無関心な人に情報を届けることは簡単ではないことが我々の実証実験でも明らかとなっている。そのため無関心のまま健康になってもらう施策も必要という仮説を持つに至った。健康に影響するのは運動や食事だけではなく、教育や収入、公共交通やソーシャルキャピタルも関係する、これだけの要素を健康部局のみで行うことは難しい。こうした考えも当初は見えていなかったが、研究活動を続けていく中で見えてきた。さらに健康のためにコミュニティ再生が重要であることも研究会を通じて知ることが出来た。ある市では約20年間で市街地が3倍に拡大したが、その間の人口は変化していない。今後は人口が減少していくため、このままでは明らかに人口密度は減少する。それゆえコンパクト+ネットワーク化が重要となる。これについても今後研究会で議論していくべき内容と考える。さらに議論だけで終わらずに実際にトライアルしてデータを取得しPDCAを回していきたい。

講演 3 「イノベーションによる地方活性化」

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北城 恪太郎

日本アイ・ビー・エム 相談役

日本経済が発展するためには地域の活性化が必要で、このためには各地域で新しいことに挑戦しなければならない。このためのリーダーとなる人材を育成することが重要である。新しいことに挑戦をする、すなわちイノベーションを起こす優秀な人材を育成するには大学も意識改革が必要である。米国では起業して職場をつくることは優秀な人物の役割とされている。日本は必ずしもそうではない。リーダーシップを持って起業をする人が賞賛される風土を醸成すると共に、国や自治体は起業をする人の後押しとなる制度を創設すべきである。イノベーションとは今までにないような新たな価値をつくることだが、イノベーションを起こさないと地域は活性化しない。

講演 4 「地域包括ケアとまちづくり」

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辻 哲夫

東京大学 特任教授

本研究会の取組みに感銘を受けている。健康施策においてハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチの組み合わせが重
要。日本のこれからの人口動態は世界のどの国も経験していないものである。高齢になっても生きがいのある生活の継続が必要でそれを支えるのは社会全体の取組みである。SWCのための環境整備や新しい知見の普及は行政の仕事である。そして生活習慣病の予防は行政の負担軽減のみのためではなく、本人の幸せのために為されるべきであり、医療費抑制はその結果である。住民を幸せにする政策が必要であると確信している。

 意見交換 

目指すべき方向性を定めて方針を打ち出す必要がある。ただしその一方で現状の法制度に縛られている現実もあり、SWC加盟自治体の中でオーソライズして対処しておくことも有効ではないか。

講演 5 「東京オリンピックとイノベーション」

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河野 一郎

日本スポーツ振興センター 理事長

スポーツは世界の様々な課題解決に貢献できる要素である。2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致活動は大きなインパクトがあった。2016年の招致活動では自分たち自身の内側の物事に目が向いていたが、今回は世界が日本に求めていることは何かということに重点をおいた。スポーツは社会を変え、国を変える力がある。社会が問題を抱えているときにスポーツの在り方は変わる。その意味では今は大きなチャンス。オリンピック開催時は日本に多くの観光客や要人が訪れるが、ここでは招致活動の中で日本が約束したことを果たしているか注目される。成功要因をおさえて責任を果たしたい。

10回記念・特別パネルディスカッション

コーディネーター:久野 譜也
パネリスト:北城 恪太郎、河野 一郎、永田 恭介、辻 哲夫

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(久野)今回のテーマは歩いて幸せに暮らせるまちをつくるという地域イノベーションの実現。イノベーションを実現するためにどんなリーダーシップが必要か、各界でトップマネジメントを経験されてきたパネリストの方にお伺いしたい

(北城)リーダーシップにはパッションが必要。重要な要素は「ビジョン」「具体策」「チェンジエージェント」の3点。組織がどこに向かうか示し、具体策を提示し、それを実現していくことがリーダーには必要

(河野)志を強く持つ、夢を描き、変化することのリスクを恐れず社会を変えるために先に動くこと

(永田)大学は学生や職員やその家族を含めると約3万人、これは一つの町のようなもの。土台にパッションがあり、それをどう表現するか。大学のプロパティやアセットを考えたとき付け加えたのが地球規模課題解決とグローバル人材の育成。ヒエラルキーを一つか二つ変えると問題が見えてくる

(辻) 問題意識を持ち続けること。改革を断行すれば批判が起きるが、住民を幸せにするために夢を持って乗り越える

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(久野)首長が障壁を越えるために必要なことは何か、参加首長の参考となるような視点を頂きたい

(北城)ビジョンや信念を持ったうえでいかにコミュニケーションするか、一方的にならず相手が行動を起こしてもらえるよう粘り強く話す。現実とのバランスはあるが自分の利益のみを考えだしたら問題は解決できない

(河野)大義と志を明確にする。一番重要なのは意識を変えること

(永田)方針を示した後に現場に向かう。行動の中でお互いに理解していく

(辻) 問題意識を持ち続けること。改革を断行すれば批判が起きるが、住民を幸せにするために夢を持って乗り越える

 意見交換 

医師や看護師等メディカルの供給側の体制の厳しい中、住民の地域ケアへのかかわり方を学んでもらう等仕組みづくりが必要。安定した供給を行うためには一定の母集団を持った訪問看護ステーションが有効で、さらに医師が参画したくなるような環境をつくることが重要。例えば在宅医療の最先端を研究できる環境を整えること等。課題は多いけれどもイノベーションは困難なときに起こる。今は改革のチャンスととらえてよい。
イノベーションを起こすためには現場にいかに新しいアイディアを出させるか。イノベーションを起こすことが素晴らしいという文化を醸成する。イノベーションの全てがうまくいくわけではないがチャレンジは必要。ベンチャー企業を支援する上での見どころは経営者、試行錯誤して乗り越える人を支援する。

特別講演「地域イノベーションのベクトル」

特別講演「地域イノベーションのベクトル」

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寺島 実郎

日本総合研究所 理事長、多摩大学 学長、三井物産戦略研究所 会長

SWCの動きに大変注目している。全国の首長が考えるためのヒントを提示することが私の役割であると感じている。日本の国土を真剣に考えていくことが必要。人口が減少し無居住地域が発生する中で、コンパクト&ネットワークがキーワードだが、SWCはそれをより地域に落とし込み、ネガティブにしないための構想と捉えている。地域の活性化を考える際アジアダイナミズムをいかに取り入れるか。日本経済はアジアへの依存度を深めている。アジアで最も一人当たりGDPの高いシンガポール(5万3千ドル)は医療ツーリズム等付加価値の高いサービス産業分野を成長させている。日本は過度な自動車産業依存が国際会議でも指摘されるが、サービス産業の高度化、高付加価値化を目指す必要がある。これからの日本は異次元の高齢化社会を迎えるが、高齢者の社会参画システムをつくり健康寿命を延ばすことの重要性はますます高まる。地域の活性化に非常に重要となる「移動」と「交流」を生み出すうえで二地域居住に注目しており、都市圏の高齢者に国内の移動と交流を促すシステムの提供を担っている。先入観を捨て工業生産力依存から脱却し、新しいサービス産業やエンターテイメント産業を研究しなければならない。イノベーションを生み出し、この国の豊かさを探求するのであれば考え方を変える必要がある。具体的プロジェクトから総合戦略を設定する局面に入っている。

話題提供 1

地域活性化統合事務局の支援策(SWC関係)

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宇野 善昌

内閣官房 地域活性化統合事務局 参事官

総合特区の担当者として、これまで様々な施策の支援に携わり、一緒に取組みをさせて頂いてきた。地域活性化プラットフォームを制定し、各省の施策や予算を連動させ、地域において利便性の高いプラットフォームを形成している。その中で連絡調整会議を立ち上げ、ベストプラクティスを出すためのモデルケース募集を全国の公共団体へ働きかけた。SWCの関連自治体では見附市や富山市、及び豊岡市、指宿市、会津若松市等がこのモデルケースに採択されているが、政策対応チームを設置し、現地で地域の課題を聞いて一緒に解決していきたい。新しい先駆的な取組を進める場合には、既存の規制が邪魔する場合がある。そのため総合特区には地域からの提案を受け付けて、公共団体と規制を持つ各省が直接協議をして規制緩和を測る制度がある。また特定地域再生事業の補助金で、計画策定及び地元の合意形成のため、具体的に事業を実施していくための費用面の支援を行っている。制度や補助金を是非ご活用いただき、地域での健幸街づくりに生かして頂きたい。

コンパクトシティの実現に向けて~歩いて暮らせるまちづくり~

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榊 真一

国土交通省 都市局 都市計画課 課長

健康のためには、歩いて暮らせるまちづくりが重要である。これまで人口増加にあわせて市街地が拡大してきたが、拡大した市街地のまま人口が減少すれば、住民の生活を支える医療・福祉などの都市機能が失われる。今後は、都市の拠点に都市機能を集約するとともに、その周辺や公共交通沿線に居住を誘導し、さらに公共交通で各エリアをつないでいくことが必要であり、これを「多極ネットワーク型コンパクトシティ」と呼んでいる。この取り組みを実効性のあるものにするために、本国会において改正都市再生特別措置法が成立し、「立地適正化計画制度」が創設されたところである。具体的に都市機能や居住機能を誘導するための仕組みを設け、あわせて事業を実施していくための予算制度も用意し支援を行っている。各地域での説明会や個別相談も行っている。この制度を是非ご活用いただき、それぞれの地域でのまちづくりに生かして頂きたい。

データヘルスの推進について

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安藤 公一

厚生労働省 保険局 医療費適正化対策室 室長