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第32回SWC首長研究会を北海道東神楽町で開催

  • samata75
  • 6月17日
  • 読了時間: 4分

多分野の知見が交差する「健幸まちづくりの未来」を探る2日間


人口減少と超高齢社会という構造的課題に直面する中、「自然と健幸になれるまち」の実現に向けて全国の自治体首長が集う「第32回SWC(Smart Wellness City)首長研究会」を、2025年5月22日・23日の2日間にわたり、北海道東神楽町の複合施設「はなのわ」にて開催しました。当研究会は、会長を務める静岡県三島市の豊岡武士市長のもと、全国の自治体間の実践共有と連携強化を目的に、年2回の開催を重ねています。

今回の会場となった「はなのわ」は、図書館、保健センター、子育て支援施設などが一体となった複合施設です。誰もが自由に集い、年齢や立場を超えてつながることのできる空間設計は、健幸行動も促すなど健幸まちづくりの理念を体現しており、参加者からも大きな関心が寄せられました。


    多彩な植物が広がる「はなのわ」の正面           施設入口へと繋がるゲート



北から南まで、参加自治体の広がりと深まり

本研究会には、北海道旭川市、千葉県市原市、東京都国立市、鹿児島県鹿児島市が初参加。それぞれの地域課題や先進的な取り組みが紹介され、参加者間の学び合いも深まりました。

当日は、講演・パネルディスカッション・事例報告などが行われ、多様な視点からの知見が共有されました。特に「85歳以上人口が高止まりする2040年問題」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、民間企業のほか弁護士も登壇。ICT、法律、地域支援の視点から複合的に課題に迫る内容となり、制度と住民の暮らしをどう接続するかが議論されました。


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    パネルディスカッション①の登壇者ら



科学と政策、住民主体の融合

基調講演では、当研究会事務局長である筑波大学大学院の久野譜也教授が、人口減社会におけるSWC政策の今後について講演。「生活の質(QOL)を高める政策こそが、人口減社会を乗り越える鍵」としたうえで、科学的根拠に基づく施策と、住民参加による持続可能なまちづくりの重要性を強調しました。

また、静岡社会健康医学大学院大学の溝田友里准教授は、「ナッジ(行動経済学的アプローチ)」を取り入れた健康政策の有効性を解説。強制ではなく、自然に健康行動を促す仕組みの構築が、新たな公共政策のあり方として紹介されました。

加えて、当研究会副事務局である、つくばウエルネスリサーチからは、内閣府SIPの取り組み「MOM UP PARK」について報告。産後うつの予防やママの孤立対策を目的に、運動・交流・支援を一体化した空間を提供するこの取り組みは、すでに複数自治体で導入が進んでおり、女性の健幸支援における革新的なモデルとして注目されています。


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             研究会初日に講演を行う筑波大学大学院・久野教授  



交通・農村の課題とともに新たに大都市課題の共有

パネルディスカッション「地域の持続的な公共交通」では、新潟県見附市の稲田亮市長や民間企業・研究機関が登壇。モビリティハブや高齢者の移動支援といった具体的施策と健康まちづくりの連動可能性が示されました。

翌日は、開催地・東神楽町の山本進町長による事例発表が行われ、住民参加型イベントや健康ポイント制度など、地域住民と共に進める健幸まちづくりの取り組みが紹介されました。さらに、北海道の富良野市・美瑛町・中札内村の首長が登壇したパネルディスカッションでは、農村地域特有の健康課題と、その資源を活かした解決策が提示されました。

また今回の研究会では新たに、大都市部の課題にも焦点が当てられました。東京都の西東京市・池澤隆史市長、中野区・酒井直人区長によるパネルディスカッションでは、「孤独・孤立」とその健康影響に関する取組が共有され、その中で、高密度な都市空間においても、住民同士のつながりを再構築する「デザインとしてのまちづくり」が求められていることが明らかとなりました。


   地域特有の課題を議論する北海道の首長ら        都市部の課題共有をおこなう東京都の首長ら



健幸まちづくりの未来へ ― 新たな展望と可能性

今回の研究会では、eスポーツの地域活用や若年層との接点強化といった新領域への挑戦についても話題となり、特に、健康まちづくりを世代間で共有するための新たな手段として、エンタメやデジタル技術との融合が重要であるという意見が交わされました。また、健康政策・都市政策の分野を超えて、法制度、ICT、民間企業、行動科学など多様な領域の知見を融合する重要性が再確認され、「連携と共創によるまちづくり」の必要性が改めて認識されたことも新たな視点と言えます。

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        登壇者らによる集合写真



おわりに

全国の自治体、研究者、企業、市民が一堂に会し、それぞれの知見や経験を持ち寄って健幸まちづくりの方向性を共有・深化させる貴重な場となりました。今後も直面する多様な課題に対して、実践と連携に基づく解決策を模索しながら、持続可能で包摂的な「自然と健幸になれるまち」の実現に向けて活動を進めます。


  第32回開催地・東神楽町の山本進町長 SWC首長研究会会長の三島市・豊岡武士市長




現在、詳細なレポートを準備中です。完成次第、本サイトにアップします。



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